コロコロvs抜け毛

「自分自身との終わりなき闘い」

【ホラー小説】袋小路(8)

拙くて恥ずかしい限りですが、むかし初めて書いたホラー小説を公開致します 


 【ホラー小説】袋小路(8)

 

 新幹線の中での暇つぶしにと一冊手に取ったところで、加藤がドリンクコーナーから缶コーヒーを二本持ってきた。
「何か買うのか?」
「雑誌っす」
「雑誌? おい、こっちのが良いんじゃねえのか」
 加藤は堤の傍に並ぶと、医療系の特集が組まれている雑誌を手に取った。「脳梗塞」「リスク」「若年化」などの単語がチラッと見えた。加藤が何を言いたいかよくわかり、適当にあしらうことにした。
「心配かけましたけど、大丈夫っすよ」
「本当かよ」
「ただでさえ嫌だっつってた出張に、あんな後でこうして来てるんですから、何よりの証拠でしょ?」
「まあ、な」
 加藤は引き抜きかけた雑誌をストンと落とした。
 洋子が貧血で倒れてから一週間。入院したのは一日だけで、すぐに退院できた。疲れや食の細さ、やつれなどは相変わらずだったが、何とか最低限の元気は取り戻し、パートにもすぐ復帰した。
 心配なので出張は見送ろうかと提案もしたが、洋子はそれを拒んだ。この機会に陽菜と二人きりで楽しく過ごすつもりなのだという。来年の春に控えた受験本番、それまでの長丁場の受験勉強をこれから本格的に挑むにあたり、勝負の夏を迎える前に、最初で最後の贅沢な息抜きを一日だけやってみたいのだということだった。学校が終わり次第、二人でどこかへ出かけてパーっと楽しむのだろう。
 中学三年生といえば、高校受験を控えた大切な時期であると同時に、思春期真っ只中の繊細な時期でもある。どちらについても、大きな問題や欠落を抱えるわけにはいかない。
 そう考えると、母親である洋子が提案する、親子で過ごす楽しい贅沢というのはとても健全な悪行のように思えた。
 堤は快諾した。実際、陽菜の教育は主に洋子に任せていて、その方法が良かったのか、陽菜は生意気なところや多少反抗的な側面を見せることはあるものの、これまで大過なくすくすくと素直な子に育ってくれている。
 堤は──ただただ出張が面倒だという本音もあるため複雑な心境だったが──安心して留守を任せることにした。
 会計を終えてコンビニを出ると、二人はJR品川駅の高輪口から自由通路へと向かった。
「それ、何?」
 加藤が、堤が手にぶらさげるビニール袋の中に目を向ける。堤は応える代わりに袋を目線の高さまで持ち上げて見せた。
 透けて見えた表紙を確認すると、加藤は頷いて前を向いた。
「エンタメ系の雑誌か。最近てんで疎くなったよ」
 堤はビニール袋ごと、ビジネスバッグの中に突っ込み、荷物をひとまとめにしながら後に続いた。
「何か、そうなっていきますよね。歳のせいなのか、時代のせいなのか」
「両方かもな。今音楽なんかもネットで落とすだろ。それで携帯プレーヤーで聴いてるから、そのアルバムのタイトルとか、曲名とか、よくわかってないことに気づく」
「加藤さん、音楽なんか聴くんすか」
「って、二課の有田が言ってた」
 何すかそれ、と堤は笑った。
「映画なんかも見なくなったなあ」
「そっすね全然──あ、いや」
「そういやお前、家族で見に行ったりしないの?」
「そうそう、ちょうど今訂正しようとしたとこです。そういや最近行きましたよ」
「家族で?」
「洋子と。陽菜は友達と遊びに出かけたんで、二人だけで。いやあ、あんまりつまんなかったら、行ったこと自体を一瞬忘れてましたよ。どうしてもそれが見たくて行ったというよりは、久しぶりに映画でも見てみるかって程度のノリでね。映画館着いてから、やってるやつ適当に選んで入ったんすよ」
「ああ、それじゃ失敗もするか。洋画?」
「邦画。何かメインの若い子らがね、みんなテレビでよく見かけるけど、何かちゃんとした役者じゃないっつーか」
「ああ大根か。むかしの銀幕のスターっつたらよ」加藤はしかめっ面をした。
 大根、銀幕のスター。堤は苦笑した。そんなに歳でもないだろうに。しかし加藤は古き良き時代に思いを馳せる。
「むかしは役作りのために、自分の歯あ抜いた人とかいたらしいぜ」
 堤も聞いたことがあるエピソードだった。「でもそういうのだと、今の若いのでも、やってる奴はやってるみたいっすよ。ドキュメンタリーでチラッと見たことあんのが、狂気的なキャラを演じるために、しばらく絶食したって話とか」
「へー。今どき珍しい。腹減らして、神経研ぎ澄ましてってか?」
「ええ。ボクサーみたいなもんなんすかね」
「なるほどな。大根は増えてるけど、根性ある奴もいるってことか」
 人波をかき分け自由通路をかなり進んだところで、新幹線乗り場に到着した。財布から、用意していた切符を抜き出し、改札を抜ける。
 ホームへ向かう下りのエスカレーターに乗ったところで、加藤が同じ話題を続けた。
「そういや役作りつったら、ハリウッドもやるよな。メッチャ鍛えて、ムキムキにしたり」
 堤はエスカレーターの一段後ろで頷く。
「あと、あれ何だったっけ、結構人気だった作品でさ、ホラー系の。超イケメン俳優でさ、役作りのために十何キロも激痩せしたの」
「あ、何か絵、浮かびました。頬とかゲッソリしちゃって」
「そうそう、あれ見に行ったな。あれ何だったっけ、ほら、えーと」
「何でしたっけ──
 何とか思い出そうと、二人とも視線を彷徨わせた。なかなか思い出せずモヤモヤして、加藤は額を叩き、堤は髪をかき上げくしゃくしゃにした。
 ここまでくると先に思い出したいと堤が思ったそのとき、先に降り立った加藤が目を見開いて振り返った。
「思い出した!」興奮気味に人差し指を向ける。「ドラキュラだ!」
 それだ。堤は先に思い出せなかった悔しさを露わにして、続いてエスカレーターを降りた。
 二人は切符を取り出すと、乗車する号車を確認した。どうやらかなり向こうだな、と加藤が前方を指差し、どちらからともなく歩き出した。
 各車両の乗車口に位置する人々の列を通り過ぎながら堤は言った。
「でも、加藤さん、さっきの。タイトル、ドラキュラでしたっけ?」
「違かったか?」
「吸血鬼ものだったのは確かだと思うけど」
「何だっけ、そう言われると俺も自信ねえや。ちくしょう、見に行ったんだけどな」
 然るべき場所に着くと、加藤は無人のベンチにバッグを乱暴に置き、その隣に座った。堤はむしゃくしゃした様子の上司に苦笑いを向け、隣に腰を下ろした。
 腕時計を確認し、切符に記載された発車時刻と見比べる。予定ののぞみはあと少しでやってくる。
 加藤が携帯をいじりだしたので、堤はさっき買った雑誌を遠慮なく読むことにした。興味を引くページをパラパラとめくりながら探している時、さっきエスカレーターを降りた時の加藤の声が脳裏によぎった。
 何ともいえない奇妙な感覚に捉われ、ページをめくる手を止めると、堤は思わず、吐き出すように声に出した。
「ドラキュラだ」
 ん、と加藤がこちらを見てきたが、声に出したことで、奇妙な感覚が、薄皮一枚分ほどめくられたように少しクリアになった。この感覚の正体を掴みたい。
 堤は再び、小さな声で言う。
「ドラキュラだ」
 やっぱりドラキュラだった? と加藤が携帯をいじる指を止めた。
「……ドラキュラだ、ドラキュラだ、どらきゅらだ」
「どうした?」
 加藤は堤の肩を軽く小突いた。しかし堤は気にも止めず、うわごとのように繰り返した。
「ドラキュラだー。どら、きゅら、だー。だっきゃーだー」
「おい、堤よ」
「うあっ」
 ベンチに電流でも流れたかのごとく、堤は飛び上がるように立ち上がった。地面に落ちた雑誌には目もくれない。
「お、おいどうした」
 加藤の声が耳に入らない。堤の脳裏であらゆるキーワードが、もの凄いスピードでめまぐるしく交差する。ドラキュラ。痩せた身体。だっきゃーだー。貧血。浴室のヒル。呪い──
「悪魔の、呪い」
 堤の小さな呟きを聞き取り、加藤が問う。
「悪魔の呪い? そんなタイトルだったか?」
「悪魔の呪いなんかじゃない」
「だよな?」
「やばい……やばいっ」
 堤は慌てて、ベンチの脇に置いてあったバッグを担いだ。血相を変える堤を見て、加藤はうろたえて立ち上がった。
「お、おい堤って、どうした」
「すんません」
「ちょ、ちょ」
 加藤が伸ばしかけた手を払う。「お願いします、大阪」
 堤! と叫ぶ加藤の制止を振り切り、堤は来た道に向かって駆け出した。
「やばい、やばい、やばい」
 ひとり言のボリュームが大きい。ホームを全力疾走していることも手伝い、周囲の人間が皆、堤に視線を注ぐ。
 堤はかまわず、更に走るスピードを上げた。階段を駆け上がると、後方で、のぞみが到着する旨のアナウンスが聞こえた気がした。
「洋子、陽菜」
 取り越し苦労であれば良いのだが。
 だがそれでは済まされないような気がした。嫌な予感がした。どうして気づかなかったんだ。あれは注意喚起みたいなものだったんだ。
「くそっ」
 問題は、大江家ではなかったんだ。

 

 

 

 

 二度目のインターホンを鳴らして十秒近く経つが、相変わらず人が出てくる気配がしなかった。インターホンが壊れているということはない。押した時に耳を澄ましていたら、ちゃんと家の中で音が響いていた。
 諦めて帰ろうかと思ったその時、家の中で電話が鳴り出したのが聞こえた。だがやはり、人が出る気配がない。電話はしばらく鳴って、やがて止まった。
「やっぱいないのかな」
 留守だと判断して、立ち去ろうと振り返ったところで、陸はふと立ち止まった。今の電話の着信音に、聞き覚えがある。
 思いをめぐらせる。そうだ、今の音はそもそも、固定電話のものではなく、携帯の着信音のようだった。
 何の音だったか思い出しかけたところで、再び先ほどの音が鳴った。陸はすぐに思い出した。それはつい最近聞いたものだった。陽菜の携帯。父親から着信した際の設定音だ。
「ハルちゃんのお父さん、会社員、だよな」
 どんな仕事をしているのか知っているわけではなかったが、夕方のこの時間、まだ仕事中であろう父親から、娘へこう執拗に連絡を取ろうとするものだろうか。陸は訝った。それに、その電話に出ない娘──陽菜のことも気がかりだ。
 こちらが塾の日は、一緒に帰るのが暗黙のルールのようになってきていたのに、今日の陽菜は学校が終わるや否や、飛ぶように帰って行った。先に教室を出たのはわかっていたが、てっきりいつもどおり裏門で待ってくれていると思っていたのに、そこに陽菜の姿はなかった。
 自分の中でルールとしてしまったのが悪いのだと反省しつつも、一緒に帰るものだと思っていただけに、一目会わなくてはこのもやもやした気持ちがおさまりそうになかった。塾まではまだ時間がある。陸は、陽菜に会いたいただその一心で、無遠慮にも家を訪ねて来たところだった。
 しかし陽菜はいない。そこへ、この電話。陸は胸騒ぎがした。もう一度家の方へ向き直る。電話は鳴り続けている。
 ドアノブに手をかけてみると、鍵がかかっておらず、すっと開いた。ドアを大きく開くことなく、そっと隙間から中を覗くと、陽菜が通学に履いているローファーが脱ぎ捨てられていて、廊下には学生かばんが放り投げられてあるのが見えた。
 どうりで着信音がよく聞こえるわけだ。もう少し扉を開いて見ると、玄関の靴箱の上に携帯が置かれてあった。知っている携帯。陽菜のものだ。
 鳴り続ける着信音が、父親の悲痛な呼び声のように聞こえ、陸は思わず携帯を手に取った。お父さんと表示された画面が、薄暗く光っている。
 陸は思い切って受信ボタンを押した。
 耳に当てる。
「陽菜っ」
「あ、もしもし」
 陽菜? と怪訝な声。
 陸はみぞおちの辺りを撫で、ゆっくりと息を呑んで言った。
「あ、あの、岡本、です」
 電話の向こうの声色が変わる。「はい?」
「あの、岡本です。ハルちゃ──堤さんのクラスメートの、岡本です。こないだ、病院でお会いしました」
「あ──ああ、岡本くんね」
「こんにちは」
「どうも。あの、陽菜は?」
「えっと、あの」
「陽菜は? 代わってほしい」
 何やら急いでいるようだ。口調が厳しい。
「いや、その、実は」陸は廊下の奥や階段の上に視線をやった。やはり留守のようだ。人の気配が感じられない。「いないんです」
「どういうこと? キミ今どこにいるの?」
「え、と」思わず身がすくむ。
「どこ?」
「……家です。堤さんの」
「うち? 陽菜は? いないってどういうこと」
「すいませんあの、何ていうか」
「悪いちょっとはっきりしてくんないか」
 言葉に苛立ちが帯びているのがわかる。正直に言うしかない。
「は、はい。あの、自分、塾に行く前に、ちょっと、立ち寄らせてもらったところで」
「うん、で」
「インターホン鳴らしたんですけど、出てこなくて。どなたも」
「洋子も?」
 もう一度、家の中へ視線を配る。「いない、みたいです」
「で何でキミが陽菜の携帯に出るの」
 早口の詰問。
「は、はい。玄関の前に立ってたんですけど、誰も出てこなくて。そしたら中から、携帯の着信音が聞こえて──
「それで入ったの? うち」
「すみません」
 沈黙。電話の向こうで、ふーっという息をつくのが聞こえる。
「いや、あのね、この際そんなのどうでもいいや。いいよ、ドア開いたってことだね?」
「はい、そういうことです」
「どもってないで早くそう言ってくれないかな、ちょっと急ぐんだ」
 すみません、と陸。
「で、陽菜も洋子もいないんだね?」
「はい。携帯は玄関の靴箱の上に置いてありました。今、それが鳴ってたので出たところです。……勝手なことして、失礼なことしてすみません」
「わかった。キミ岡本くん、だったよね」
 とりあえず苛立ちは治まったようだが、改めて名前を確認され、陸は緊張した。何を言われるのだろう。
 続く言葉は、まったく予期しないものだった。
「悪い、頼みがあるんだ。多分二人とも近所のマッサージ屋に行ってる。整体院っていうか……わかるだろ? ウチの区画の一番通りに面したところにあるやつ。草間治療院だか何だかって名前の」
 陸はピンときた。「あ、ああ、はい」
「多分、二人ともそこにいる。岡本くん悪いんだけど、今すぐそこに行ってくれないか。俺もすぐ行く。今向かってるから」
「え、あ、はい。でも、どうして」
「嫌な予感がするんだ──
 続く堤の言葉は、短く、シンプルで、理解できる言葉だったが、陸にとって、十五年間生きてきて、そんなセリフをリアルに聞いたのは初めてだった。
「二人が危ない」
 二人が、危ない? 友人の父親からふいに聞かされたその言葉を、陸は受け止めきれずにいた。なぜかわからず苦笑してしまう。どういうことですかと問い返した時には、堤からの電話はすでに切れていた。
「二人が……危ない?」

 

 言われるがまま、向かう他なかった。陸は入り口の正面に立ち、看板を読み上げた。
「草間、療術院」
 ドアノブのあたりに目を落とすと、小さなプレートがぶら下がっていた。
「クローズ」
 閉まっている。
 とはいえ、このまま引き下がるわけにはいかない。何故なら、二人が危ない、からだ。陸は本日二度目の招かれざる客として、ドアノブに手をかけた。
 鍵はかかっておらず、ドアはすっと開いた。受付には誰もいないが、店内には小さなボリュームでBGMがかかっている。
 休業という雰囲気ではない。クローズと出ていたとはいえ、店を閉めたばかりなのか、それとも店を開ける直前なのか、そんな風に思えた。
 だが、陽菜の父に言われた言葉が言葉だ。すみません、などと大きな声で人を呼ぶ気になどなれない。
 入り口の正面に受付、左手のスペースは待合所のようだった。壁際に沿ってパイプ椅子が二脚ほどあり、傍には等身大の人体骨格標本が立てられていた。床にはエクササイズでよく使われるバランスボールが転がっている。
 少し臆したが、物音、足音を立てないように、中に入ることにした。
 受付の背中の側に衝立があり、そのすぐ裏側にベッドが一つ置いてあることがわかった。そこには誰もいない。
 奥には小部屋が二つ並んでいた。二部屋とも、入り口が正面に向かって並んでいる。入り口にはドアは備えられておらず、膝下くらいまでのカーテンで目隠しがされているだけだった。
 あのカーテンの奥に、誰かいるのだろうか。
 陸は耳をすました。すると、BGMのせいで気づかなかったのか、カーテンの奥から、ウン、ウンという声がしているのが聞こえた。甘えた猫のような、小さく甲高い声。
 何か淫靡なものを感じ、どくんと胸が打つのがわかった。 
 陸はさらに足音に気を使いながら、奥へと進んだ。
 近づいてみてわかったことがあった。この声の主は、猫などではない。人の声だ。どちらの部屋からなのか判断がつかず、左手の部屋から確認することにした。入り口の脇に身を潜め、陸はカーテンをそっと開けて中を窺った。

 

(つづく) 

 

 

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 渋々応じる淳司の前に現れた五人目は、偶然にも以前電車で席をゆずったことのある不気味な女だった。酒に酔ってそれと気づかぬまま声をかける淳司。肯定する女。ふたりは、流れで関係をもってしまう。
 後日、淳司は自宅のベランダから思いもよらぬものを見た。アパートの表の電話ボックス。淳司の部屋をじっと見上げていたのは、例の女だった。
 女のストーカー化を懸念した淳司は、ふとした思いつきで難を逃れようと企てた。しかし後先を考えないその行為がさらなるトラブルを引き起こし、女を思いもよらぬ狂気へと駆り立てる。

 この女からは、逃れることはできない──絶対に。